学園(姫)
「もう、駄目だ」

走り終わったときには、夕刻になっていた。

汗だくになり、芝生の上に寝転ぶ。

「はあ、はあ」

昼間よりは涼しいものの、体の熱は引かない。

「ほれ」

頬にいきなり冷たいものが当たる。

「ああ、気持ちいい」

俺を見下ろすのは、龍先輩である。

汗をかいてはいるものの、まだまだ走れそうだ。

その隣には、スポーツ飲料を飲む乾が何事もなく立っている。

俺に渡してくれたのも、スポーツ飲料の缶であった。

「まったく、情けない奴じゃ」

「先輩、達が、凄いん、ですって」

昼間から夕方まで走るなんて、一般人の俺からしたら過剰な運動といえる。

「普段から鍛えぬそなたがいけぬのじゃ」

「え、ええ?」

高校生といえば、遊びたい盛りなのにな。

でも、今日は役得といえよう。

話も聞けたし先輩の走ってる姿も見れたし、万々歳だな。

先輩は寝ている俺の隣に座る。

「そなたの心配する事は、何もない」

龍先輩の瞳は、憂いを帯びていた。

何も起こらない。

それは、俺も含まれている言葉だったのかもしれない。
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