学園(姫)
「そなたと言う奴は」

困っているわけではなく、喜んでいるわけでもなく、仕方のないような複雑な顔をしている。

「まあ、良い。話すのは構わぬが、飯を買うて来い」

さすがに、先輩のお弁当を分けてもらうわけにもいかない。

「分かりました。待っていてくださいよ?」

「うむ」

「絶対ですよ?」

「そなたの時間まで潰してワラワを探しておったのじゃろう?そのような真似はせぬ」

俺は最短距離で食堂まで走り続けた。

食堂には、食べる物はほとんどが残っていない。

「はあ、はあ、これとこれ」

「はいはい」

ジャムパンと唐揚げとトロピカルフラッシュジュースを買う。

再び走る事二分。

「はあ、はあ、お待たせしました」

龍先輩は変わらぬ姿のままで、ご飯を食べていた。

いや、ご飯には手を付けていないようだ。

「俺を、待っていてくれたんですか?」

「待てと言うたのはそなたではないか」

「ああ、そうでしたね」

先輩の隣に座り、唐揚げを頬張る。

「やっぱ、先輩の隣で食べるから揚げは一味違いますね」

本当のところは味なんて変わりはしない。

でも、楽しさだけは一段と違う。

「白々しく感じる」

見抜かれているようだ。

「先輩の軽やかな匂いが唐揚げの味を引き立ててるんですよ」

「そなたは、匂いフェチか」

「先輩の、ね」

「むー」

「困らないで下さいよ。先輩」

「困るに、決まっておろう」

先輩の箸は止まったままだ。
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