学園(姫)
「そんなこんなで、意識して口説き始めたのは、龍先輩だけ」

「ほんに、そうか?」

「これが嘘なら、先輩の手を握ります」

「それは、そなたが得をするだけではないか」

「ですよね」

ジャムパンを頬張った後に、ジュースを啜る。

あまり美味くはないようだ。

「何故、そなたはワラワのような輩に現を抜かそうとする?」

「理由、聞いちゃいます?」

「うむ」

「優しいでしょ、可憐でしょ、料理は美味いし、スポーツも出来る」

そこで一区切り置いた。

「なーんて、分かりきった答えなんて、どうでもいいんですよ」

「何?」

「先輩が俺にとっての癒し。だから、先輩の傍にいたいと思う。自分が癒されるから」

「自分のため?」

「言い換えるなら、生きるための利益ですかね。でも、自分が利益を得るためだけに先輩を追い続けたいわけじゃない。俺は先輩の利益を生み出したいんですよ」

「ワラワの利益」

「単刀直入に聞きます」

俺は立ち上がり、先輩の前に立つ。

「何じゃ?」

「先輩は家にいて、楽だと思いますか?」

先輩の表情が強張る。

俺の当初の目的なんて、すっかり空の彼方に飛んでいってしまっている。
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