学園(姫)
先輩は答えない。

「すいません。急すぎましたね」

俺は再び、先輩の隣に座る。

「はは、恩着せがましいのは駄目ですよね」

取り返しの付かないことしたような気がするな。

しかし、先輩は顔を挙げ、俺の瞳を捕らえる。

「丞、自分の言った台詞に後悔はせぬな?」

「もちろん、先輩の話は何だって聞きますよ」

一息つき、再び顔を上げる。

「ワラワの父君と母君は、一族に貢献をもたらした」

「ええ」

閨閥結婚が含まれてる可能性が大きい。

そして、色々な事をして、一族を大きくしていったといったところか。

「一族の繁栄を一に考え、個を消し、全を善しとする」

「なるほど」

「それは、一族にとっては正しい道である」

「確かに」

何となくは解らないでもないが、楽しくはない生き方だな。

閨閥結婚もその一貫であるといえよう。

何故ならば、大と大を組み合わせることに、繁栄が約束される可能性が大きくなるからだ。

「幼少の頃は、ワラワもそうして生きていくと思うておった」

「うんうん」

全然、よろしくない。

しかし、今はといえば、そうでもないのだろう。

「先輩は、父親と母親の言う事を全て聞かなくちゃならないって事?」

「それが、一族のためであるならば、ワラワは」

「なるほど、ね」

親を尊敬は出来るし、逆らうなど思考回路の中にはなかった。

しかし、祖父の行動によって、誤差が生じたわけだ。

でも、祖父もそういう生き方をしてきたわけだよな?

繁栄を望んでいるとはいえ、歳を取るのと同時に考え方が少し変わってきたのかもしれない。

孫にはもう少し別の生き方を見せようとしたのだろうか。
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