学園(姫)
予鈴のチャイムが鳴ってしまった。

先輩はご飯を中途半端にしか食べていない。

「あー、先輩、すいません」

「よい、そなたに話せて、少し楽になった」

俺を責めるどころか、笑顔になって答えてくれる。

女神の称号は伊達じゃない。

「すまぬが、先に戻らせてもらう」

先輩は弁当を閉じて、教室に戻ろうとする。

二年の教室よりも三年の教室のほうが遠い場所にある。

「先輩、明日、学校が終わってからでいいですか?」

「構わぬ」

今日は用意をしてないだろうしな。

俺も教室に戻ろう。

飲み物を口にしながら、走る。

「先輩の匂いは美味いのに、こいつは不味いな」

先輩の汗を入れれば、少しは美味くなるのではないだろうか。

「今の思考を先輩に嗅ぎつけられたら、死んだも同然だぜ」

何事もなく、教室に辿り着く。

クラスメイトのほとんどが教室に戻っていた。

「お前、龍先輩に近づいてるって、本当か?」

クラスメイトの男子が聞いてくる。

「秘密だ」

何にしろ、情報は与えない。

先輩の良さを教えるなんて、勿体無いぞ。

俺は独占主義だからな。

「噂になってるぞ」

「だから、何だよ?」
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