学園(姫)
「上手く出来ているかは分からぬが」

「そんなの、構いませんよ」

俺はいつも以上に集中力を高める。

先輩の作ってくれた問題なんだ。

全問正解する勢いでやらなくちゃ失礼に値する。

ペンを廻して、プリントと向き合った。

先輩は、三年の教科書の確認をとっている。

自分のやるべき事と他人の面倒の両方を見るなんて、心に来るね。

先輩の問題はちょっと複雑で粗はあるものの、基礎をやっていればきちんとわかるような作りになっていた。

問題を作ることなんて、学生の内ではあまりないだろうしな。

俺は問題を三十分かけてゆっくり解いた。

「先輩」

「ん、出来たのかえ?」

龍先輩は教科書から目を離し、俺のほうを向く。

「はい」

龍先輩にプリントを渡すと、採点にとりかかった。

「なるほど、そなた、数学に関してはあまり問題はなさそうじゃな」

「そうですか?」

「うむ、問題を作ったワラワとしても、ここまで解かれると教える事もない」

それはそれで寂しいな。

わざと間違えて先輩に厳しく教えられたかった気持ちもわいて出てくる。

勉強とは、少しばかり理解力があれば何とかできる。

しかし、他の教科も見てもらうとなると、先輩に負担がかかる事になる。

「先輩の作った問題は、ちゃんと解けるように出来ていて、試験に出てもおかしくない感じでしたよ」

これは嘘ではない。

教師の考えた物と、あまり違いはない。

完成度としては教師の作った物のほうが上ではあるが、それは経験の成せる技だ。

後何度か問題を作れば、龍先輩も教師のような上手い問題を作る事だって出来るはずだ。
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