学園(姫)
「そなたは、意図的にワラワを困らせているように思えるのじゃ」

「先輩との時間が永遠に続くのなら、俺は、何も言わなかったかもしれない。でも、そうじゃないんです。今の、俺達の間には、限られた時間しかないんです」

先輩の肩を掴んでこちらを向けさせる。

「俺は、先輩が」

「聞けぬ」

俺の口を抑えた。

「ワラワは、お前を、失いたくはない」

泣きそうになりながら、本心を告げた。

状況は、先輩自身も理解している。

だから、俺の言葉を拒んだ。

決して、俺が嫌いだからだとかじゃない。

先輩の顔を見ていれば、理解できる。

十分だ。

どうでもいいとか、嫌いではないとか。

俺に対しての気持ちが、マイナス面ではないという事を知れただけでも、得と思っていたほうが良い。

「すいません」

先輩の肩から、手を離した。

「ケーキ、食べましょう」

「そう、じゃな」

無言になりながら、ケーキをつついた。

その後は勉強をすることもなく、料理を作ることもなく、先輩は家へと帰ってしまった。

今の状態では、美味しい料理を作る事は敵わないだろう。

「ふう」

今日の結果から考察するに、明日から先輩の態度が変わる可能性がある。

嫌いではないが、失いたくもない。

先輩がとる行動とえば、俺に対しての回避行動だ。

俺の気持ちを冷めさせる、諦めさせるといったような考えにいたる。

本気であるならば、俺ならそうする。
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