学園(姫)
「では、何故辞めぬ?」

「例え危なくても、俺は自分の気持ちを貫き通したいんです。今やってる事が、間違いだなんて誰にも言わせない。それが、龍先輩であってもね」

「何故、自分の体を大切にせぬのじゃ!」

「確かに、痛い思いをするなんてまっぴら御免ですよ。でも、龍先輩に気持ちを伝えないでいるのに比べれば、ちっぽけなものです」

第一段階が終わらなければ、第二段階へと進む事は出来ない。

第一段階とは、龍先輩を素直にさせる事である。

「そなたなど、嫌いじゃ」

「俺は先輩が好きですよ。そうですね、何かに例えるのも馬鹿らしいくらいに、好きなんです」

「うう、ワラワは、どうすればいいのじゃ」

「先輩、自分の気持ちを素直に表す事も大事だと思います。そうなりずらい環境だとしても、今、我慢し続けても、道は開けません。どこかで、行動をするべきなんです」

「丞」

「俺は、道を開くために行動する。だから、先輩に気持ちを伝えたんだ」

「そなたの、気持ちは、分かった。すまぬが、抜けるのを手伝ってくれぬか?」

「ああ、すいません」

先輩のお尻に手が伸びそうになったが、気持ちを抑えながら先輩を塀から抜けさせるために腰を持って引っ張った。

少しだけ梃子摺ったが、何とか抜けたようだ。

「先輩、大丈夫ですか?」

「う、うむ」

先輩は俺のほうを向こうとはしない。

顔がマグマのように赤く染まっている。

「えーっと、その」

さっきまでの勢いはどこへやら。

一度落ち着いてしまうと、とても恥ずかしいものを感じる。

「俺は、本気です」
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