学園(姫)
「うう」

そして、龍先輩は泣き始めてしまった。

「分からぬ、もう、どうしてよいのか、わからぬのじゃ」

先輩に手を伸ばし、頭を撫でる。

キューティクル感が素晴らしい。

「俺は、先輩の、気持ち聞きたいです。俺を守るとか、何をしなければならないだとか、そんな事はどうでもいいです。素直な気持ち、教えてください」

「ワラワはそなたの傍にいる事が、楽しい」

「うん」

「今まで感じたことのない気持ちなのじゃ」

「それが、先輩の気持ちなんですね」

「ワラワは、そなたともっと、一緒にいたい」

ついに、先輩の気持ちを聞き出せた。

第一段階は終了した。

「それでいいんです。無理して隠す必要なんて、ないんですよ」

「でも、そなたが」

俺は首を振った。

「俺、先輩と、共にある限り、死にません」

「丞」

俺は龍先輩を抱きしめる。

龍先輩も俺の腰に手を廻して、腕に力を入れた。

お互いの意思でくっつくなんて、初めてじゃないだろうか。

今までは事故が多かった。

でも、今は違う。

短かったような、長かったような道のりを得て、辿り着いたのだ。

しかし、まだ、終わったわけではない。

問題を消していかなければ、普通の恋愛には到達しないのだ。

まだ、スタート地点よりも少し後ろにいるくらいである。
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