学園(姫)
「ま、まあまあ、姫ちゃんもそう怒らずに」

「すまぬ、取り乱した」

普段の龍先輩からは想像もつかない取り乱し方だった。

先輩は乱れた髪と服を直す。

「俺は気にしてないから、料理の続きを」

「そうじゃな、ワラワも早くそなたに食べてもらいたい」

龍先輩の言葉で無限大の癒しを手に入れられる。

龍先輩は再び、料理を始めた。

料理の作る音が、心地がいい。

あまりの居心地の良さに眠くなってきてしまいそうだ。

「ふぁあ」

「何じゃ、そなた、寝ておらぬのか?」

料理を作りながらも、俺に聞いてきてくれる。

「そうでもないんだけどな。料理を作る音があまりにも気持ちよくて、眠さが」

「もう少し我慢するがよい。すぐに出来る」

「ああ、姫ちゃんの可愛い背中でも見ておくよ」

「そなた、吟に毒されておらぬか?」

「本心だよ。俺は姫ちゃんが好きだからな」

「そなた、手元が狂うではないか」

「ごめんごめん」

幸せだなと思いながらも、ストロベリートークを繰り広げる。

二人の間に意味はあっても、他の人間からすればのろけになるのだろう。

「すまぬ、待たせたの」

皿の上には綺麗に盛り付けられた、色とりどりの野菜と焼かれた牛肉。

見事に和洋折衷を表現していた。
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