学園(姫)
しかし、数秒後に理解が及んだ。

「お前が雇われたのか」

「言う事を聞かなかったら、どうなるかも理解してるわよね?」

「ああ、分かるよ。でも、少し話をしようぜ」

「話し合いする意味ある?」

意味はないかもしれない。

乾が求めている答えなんて最初から決まっているんだからな。

話で覆るとも思わない。

今は、クラスメイトとして話をしようと思っただけだ。

「その件じゃなくても、お前とは話をしたかったんだ」

「そう」

「丁度晩飯なんだし、食っていけよ。そこで話をしよう」

「しょうがないからご馳走になってあげる」

乾光蔵は拒否するだろうが、乾子鉄はすんなり受け入れた。

腹でも減っているのだろうか。

俺は子鉄を連れて、家に戻った。

「おかえりなさい。あら、お友達?」

「お邪魔します。乾子鉄と言います」

礼儀だけはきっちりしているようだ。

「そんなところ。渚さん、余分にご飯ってある?」

「ええ、少し大目には作ってますよ」

キッチンに上がると、吟ネエがすでに着席していた。

「んー、お前、本当に女が好きアルな」

「吟ネエには負けると思うよ」

「アチシの目指す道と比べるのは愚か者のやる事アル」

プロと素人の差くらいはあるんじゃないだろうか。

「乾、そこに座ってくれ」

俺の隣に座ってもらう事にした。
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