学園(姫)
「先輩、一人っすか?」

俺は先輩の前に座った。

「部の出席を強要はしておらぬ。それに、本来ならば、今日は休みじゃ」

「休みなのに出てくるなんて、とても真似できませんよ」

「では、そなたは何故学校に来たのじゃ?」

言われて見れば確かに。

しかし、俺には目的がある。

「龍先輩に会いに来たんですよ」

「また、冗談を言いよって」

「常に先輩に対しては真摯な気持ちでありたいと思ってます」

「そなたには吟がおるではないか」

今だに俺の気持ちは通用しないというところだろう。

「本心です」

うろたえても仕方がない。

場の空気を濁すような真似をして、自分の言った事を無駄にしたくはなかった。

「迷惑かも知れません。でも、これだけは渡しておきたくて」

先輩の手をとり、掌の上にプレゼントを置いた。

「これは」

龍先輩は少し驚いた顔をしている。

いきなり渡されたら、誰だって驚くだろう。

「開けてみれば、答えが入ってますよ」

「今、開けてもよいか?」

「いいですよ」

龍先輩は綺麗な指で包み紙を剥がしていく。

静かに箱の中身からチョーカーを取り出した。

「ブレスレッド、かえ?」

本気でチョーカーの事を知らないのだろうか。

「チョーカーですよ」

「ワラワを猫同然のように扱うというのかえ?」

龍先輩が猫の仕草を真似するところは一度でいいから見てみたい。

しかし、そう簡単にやってくれないだろうな。

「似合うと思って買ったんですけど、駄目でしたか」

「何故、ワラワにこれをくれるのじゃ?」
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