学園(姫)
チョーカーは俺の手の中にあった。

「もう一度だけチャンスを下さい」

目を閉じて、乱した精神を集中しているのだろうか。

俺の台詞を無視してしまっている。

「お願いします。もう、二度とやりません」

土下座をしながら、畳に頭をこすりつけた。

「や、やめい。畳が傷むではないか」

俺の状況はちゃっかり覗いていたようだ。

「分かった分かった。今度は真摯な気持ちとやらを、ちゃんと証明してもらいたいものじゃ」

ちょっとセコイ技だったが、多少なりとも効果はあったようだ。

どこが真摯やねんとツッコミを入れたくなってくる。

再び髪を持ち上げて、うなじを見せる。

誘惑に負けそうになりながらも、今度はしっかりとチョーカーをつけた。

今日一つ分かった事は、胸よりもうなじのほうが感度が高いという事だろう。

体を洗う以外で触った事もないし、触られた事もないから、敏感になっているのか。

おっと、また真摯な気持ちを忘れているぜ。

「ふう、設置作業完了」

汗を拭いながら、一仕事終えた気持ちになった。

「そなたはうなじという物が好きなのかえ?」

「『先輩』のうなじですけどね」

ああ、またやってしまったようだ。

「むー」

困らせるつもりはないんだけどな。

でも、余計な一言が多いのかもしれない。

あまり墓穴を掘るのも良くないので、早々に立ち去ったほうがいいかもしれない。

「じゃあ、先輩、俺はこれで失礼します」

「少し、待たぬか」

さっさと帰りたいのだが、先輩からのお呼びでは立ち止まるしかない。
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