大切な人
「楽しかったね~!」
日が暮れてきた帰り道、私は美月と笑みを浮かべながら歩っていた。
私はふと思い出す。
「そういえば、陸くんの好きな人わかった?」
美月は顔を赤くさせる。
「い、いや……まだわかんない…。」
「そっかー…」
美月は中学生の頃からの大親友です。
男の子と普通に話せて、明るくて、優しくて……、私の憧れの人でもあります。
今まで美月は好きな人がいなかったのに、好きな人ができるなんて……
よほど陸くんのことが好きなんだなぁって思う。
「ユリは好きな人いないの?」
「えっ?」
好きな人……。
「いないよー。私そういうのよくわからないし……。」
「そっかぁー。」
私は今までに好きな人ができたことがない。
好きな人ができるという感情がよくわからないんです。
「ユリかわいいのにもったいないよー!」
「え?いや……そんなことないよ!」
美月が道端に落ちていた空き缶を蹴る。
「そんなこともあるっつーの!大体そのおかげで友達に無視されるようになっちゃうし……。」
………友達………
頭の中で過去がよみがえってくる。
自然に笑みが消えた。
「ご、ごめん!思い出しちゃった……?」
必死に謝る美月、私は心配かけないように無理矢理笑みを作った。
「大丈夫!!」
でも……内心気持ちが沈んだ。
思い出したくもない過去が、よみがえってきた。