大切な人



「ユリって、友達を裏切るサイテーなやつなんだよ。」



いつも一緒にいた友達が、クラスメイトに言っていた。



私は聞いてしまった。



いや、わざと聞こえるように言っている。



……なんで…………



私……なにかしたの…?



傷つけるようなこと言った?



言ったなら謝るよ……



だからお願い……、無視しないで……。



私の周りに誰もいなくなった。




教室の隅で1人になると、私はある会話を聞く。



「花咲ってさぁ、友達の好きな人を奪ったんでしょ?」



「えっ?そうなの?!」



「らしいよ~!あの学校内ですっごい人気の人とつきあったんだって!」



「隣のクラスの?」



「そうそう!なんか自分がモテるからって、調子にのってるよね~!」



頭が真っ白になった。



あの人のこと好きだったの…?



初めて聞いた話だった。



いつも一緒にいて、いつも喋ってたのに……。



別れなきゃ……。



別れて謝らなきゃ……。



しかし自分から別れを切り出す前に、相手から別れを切り出された。



「いじめられてるから……さ。」



自分から言おうと思ってたことだから、調度よかった。



でも……いじめられてるから、という理由で別れられるのは…惨めだ……。



それから私とその人は、一切話さなくなった。



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