大切な人
「まさか!!とてもいい人だとは思いますけど……。」
「そうか…。」
なぜ…こんなこと聞いたんだろうな……俺……。
花咲を見る。
白い肌に、ポニーテールにした長くて艶のある髪に、吸い込まれそうになる大きな瞳……
こんな完璧なものを…他のやつらに渡したくない……。
花咲が俺を見ている。
「なにかしましたか?」
もう……我慢の限界だ……
俺は花咲の腕を掴んで引っ張る。
俺と花咲の顔が…近い……
花咲は戸惑いを隠せずに、俺の目を見ていた。
静かな教室に、俺と花咲がそのまま教室に溶け込んだかのように静かになる。
時間だけが……進む……
「俺とつきあえ。」
時間だけが……刻々と………
…何言ってんだ……俺……
花咲は無言のまま。
何を……考えているんだ……?
俺は……俺は……あいつらとの約束だって……
「いい…ですよ……。」
静かな教室に、花咲の声だけが聞こえた…ちゃんとはっきりと……。
嘘…だろ…?
驚きを隠せずに、掴んでいた腕を離した。
「誰にも……みんなにも…このことは秘密にしてください…。」
花咲はカバンを持って、教室から走って出て行った。