大切な人
2、幕開け by陸斗



「俺らって何組だっけ?」



智紀がシューズに履き変えながら星夜に聞くと、星夜がバカにした。



「3組だ。そんなことも記憶できないのか。」



「興味ないだけだよっ!」



全員同じクラスという、奇跡なんだか怪奇現象なんだか…腐れ縁なんだか……。



「な、なんて言ってる場合じゃねぇよ!早く行くぞ!」



登校時間より5分遅れての到着、教室に着いたときは…もちろん笑われた。



「初日から遅刻なんて度胸あるなぁ~。」



担任の男の先生が、俺らの顔を見ながら言う。



「まぁいい、早く席につけ。」



俺らは即座に自分の席に着いた。



俺は窓際の1番前の席で、星夜は廊下側の1番前。



その後ろが薫で、廊下側の1番後ろが智紀。



そして真ん中の列の1番後ろが優だった。



あぁ…初日から遅刻のあげく、クラスのやつらに笑われるし…最悪だ…。



初日から注目の的になってしまった俺らは、そのおかげもあってか、気軽に話しかけてくれた。



……にしても気になるな…。



俺は1人でずーっと思ってたことがある。席に着く前からずーっと…。



隣に座っている人だ。



ストレートの長い髪をポニーテールしていて、なめらかそうな白い肌、大きくてパッチリした瞳……。



今まで見た中で、1番美人だ……。



どうやら名前は、花咲ユリと言うらしい。



…ってなに考えてんだ!俺!!



…でも気になる……。



なんなんだよ…心臓がバクバクしてんぞ!!



でも、どうやらその考えは、俺だけじゃなかったみたいだ。



「おい!陸!おまえの隣の席のやつ、めっちゃ美人じゃん!!」



「かわいいよねぇ~~。」



すると、星夜が言った。



「ま……かわいいんじゃないか?」



普段、どの女を見ても「ブス」という星夜が「かわいい」と言った。



「だよな?!お、俺だけじゃないんだな!」



会話を聞いてにこにこしている優、いつもと変わらず盛り上がっていると、どっかの女が話しかけてきた。



「あんたらすごいね~!初日から遅刻なんて~!」



女の割には図々しいな…。



「うるさいな、ブス。」


< 5 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop