読めない手紙
見物{ミツケタモノ}
 
でも、実際はそんなに都合よく死ねない。
紅の線が増えるだけ。
虚しさが…増えるだけ。

寂しくて、寂しくて

不安になるときがある。


死にたい自分と生きたい自分の間で葛藤する。


どうしても、寂しいとき。
彼の部屋へ向かう。

そのままにしていた部屋。
いつ帰ってきてもいいようにって。

彼の香水の匂い
彼がまた、抱き締めてくれそうで。

「冗談だよ。寂しかったね」

って、笑って戻ってきてくれそうで。


分かってる。
もう戻ってこないことくらい。
でも、期待せずには居られない。

この期待が、私の唯一の生きる意味だから。



 
< 6 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop