残された光

初恋


暖かい日射し。
柔らかな春の風が、
病室を駆け抜ける。

私・朝月留衣は、
目を閉じてその風を
感じた。

優しい空気が、
頬を触りながら
通り抜けていく。

腕には点滴の針。
病室のベッドには
横たわっている私。

そう、私は今、入院していた。


幼い頃から病弱で、
この17年間を
ほとんど病院で過ごしてきた。

点滴をしても、
薬を飲んでも、
なかなか治らなかった。


学校もろくに行ってないし
外すら
あまり歩いたことがない。ましてや恋なんて
そもそも相手がいない。


うらやましい。


新しい制服に身を包んで
この風を体一杯に
感じれる
健康な子達が。
これから始まる
いろいろな恋に
胸を踊らせる子達が。


「留衣ー?どうした?
ぼーってして。」

そんな風に
考え事をしていたら、
隣のベッドの朱里ちゃんが
心配して話しかけてきた。

「何かね、この季節には
いつも同じ事
考えちゃうの。
うらやましいなぁ、って」

「なるほどねー。
確かにそうかも。
私は小6から
入院してるけど、
留衣は小さい頃から
だもんね・・・」

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