白雪姫の惚れ薬
「あ、おかえりぃ」
部屋のドアを開けるなり、聞こえてくる声。
見なくたってわかる。
人の部屋で、こうして我が物顔でくつろげる人間なんてひとりしかいない。
…姉ちゃんを除いては。
「芯ちゃん、ひどいよ。これ、最新刊買ったなら教えてよ」
マンガから顔を上げることもなく、
「もう少しで、同じの買っちゃうとこだったよ。」
ぶつぶつ文句を言っている。
ローテーブルの上には、母さんが用意したらしきジュースのコップと、おそらく持参してきたらしいお菓子の数々。
部屋には、甘ったるいチョコレートの匂いが漂っている。
制服姿のところを見ると、自分の家には帰らずにまっすぐここに来たらしい。
……っていうか、いつからいたんだ?
「しかもさ、なんで帰り、待っててくれないの?」
顔を上げたと思ったら、恨みがましい瞳でこっちを見つめる朱李。
「は?」
なんで、俺が待たないといけない?
約束した覚えはない。
「今日は、生徒会だから遅くなるって言ったじゃない。」