白雪姫の惚れ薬
L
「わぁ。リンゴだぁ。」
テーブルの上のそれを見つけるなり、朱李は歓声を上げた。
「朱李ちゃん、リンゴ好きだったわよねぇ。むいてあげようか?」
「母さん!!」
にこにこしながらリンゴを掴んだ母さんから、素早く取り返した。
「だから、これは姉ちゃんのなんだってばっ」
まったく…人の話聞いてないのかよ。
「いいじゃない、ひとつくらい…」
「芯ちゃんのケチ~」
恨めしい目で、ふたりから睨まれる俺。
なんか、理不尽すぎやしないだろうか?
「ま、いいわ。お夕飯にしましょ。」
そう言ってキッチンに戻る母さん。
「わー。今日はビーフシチューだぁ!」
その後に続く朱李。
当然、食べていくらしい。
朱李の両親は共働きだ。
帰りも遅い。
だから、うちの母さんは、ひとりっ子の朱李を心配してこうしてよく夕飯に誘う。
そう。別に珍しいことではない。