白雪姫の惚れ薬
「もうリンゴの季節なのねぇ。早いわねぇ。」
食事をしながら母さんはしみじみと言った。
「朱李ちゃん、もう少し待っててね。青森のおばさまからたくさん送られてくるはずだから。」
「わーい。楽しみっ」
母さんは、朱李に甘い。
研究一筋の姉ちゃんがあまり家に寄り付かないからつまらないのか、朱李をまるで娘のように可愛がっているんだ。
一緒に出掛けたりしてるし…
俺のほうが他人みたいだ。
「あ、そうそう。今日、お掃除してたらね、懐かしい写真を見つけたのよぉ」
「えー?どんなの?」
今だって…
こうして、俺の存在を完璧に忘れてるし。
「ほら、幼稚園の学芸会のやつ!」
「ああ、あの白雪姫の!」
「そう!朱李ちゃんがお姫様をやったやつよぉ。可愛かったわよねぇ……お芝居も上手だったし。」
「やだなぁ、おばさんってばっ」
「あとでゆっくり見ましょうね」
……盛り上がってるし。