白雪姫の惚れ薬
“さとしくん”だけじゃなくて、他の男の子たちも同じだった。
なぜか、クラスで一番人気のあった朱李。
みんな、朱李を好きだった。
きっと、あれが人生最大の“モテ期”だな。
……可哀想に。
まあ、そんなわけで、あの頃朱李と仲が良かった男の子は俺だけだったから。
結局、朱李のワガママに根負けした先生が、俺に王子役をやらせたんだよなぁ……
あれは、子供ながらめちゃくちゃ恥ずかしかった。
姉ちゃんにも冷やかされるし……
何より……
「あのとき、本当にちゅーするとは思わなかったわぁ。」
「やだぁ、おばさんってば」
「可愛かったわよねぇ。初々しくて。微笑ましくて。」
……そう。
俺の“ファーストキス”はいとも簡単に奪われてしまったんだ。
「お顔を近づければいいからね」
先生はそう言った。
俺は言う通りにしたはずなのに……
ぐいっと朱李に引っ張られて、バランスを崩してそのまま……
大観衆の前で、写真にまで残ってるなんて……
まさに、消したい過去だ。