白雪姫の惚れ薬
P
『白雪姫』の物語を最初に教えてくれたのは、姉ちゃんだった。
たぶん、幼稚園くらいのとき。
まだ字が読めない俺に、よく絵本を読み聞かせてくれていた姉ちゃん。
それは嬉しかったんだけど……
ほとんどが、自分の持っている“お姫様”の話だったんだよなぁ。
当然、文句を言えるはずもなく、俺は黙って聞いていたわけだけど。
まあ、それなりに楽しかったし?
その手の話に詳しくなったおかげで、一時女の子に注目されたし?
いいことはあったけどさ。
でも……
いちいち大変だったんだよなぁ。
その頃から、姉ちゃんは少し変わっていたから。
「お姫様は王子様と幸せに暮らしました――おしまい――」
で満足する人間じゃなかったんだ。
やたら、難癖をつけてうんちくを並べる。
女の子らしからぬ女の子。
子供らしからぬ子供。
あの人は……
昔から“科学者”気質を持ち合わせていた。