白雪姫の惚れ薬
「入ってたのって、“惚れ薬”じゃないの?」
真面目な顔で、姉ちゃんは続けた。
「食べ終わって、初めて見た人に恋をする、ってやつ。なんで眠ったのかはわからないけど、そうすれば辻褄が合うでしょ?」
同意を求めるように、俺を見つめる瞳。
正直、そのときの俺には“惚れ薬”の意味さえわからなかったけど、
頷かなきゃいけないような雰囲気で……
あとで母さんにでも聞こう。そう思って、姉ちゃんの話に耳を傾けていたんだ。
「王子様もさ、キスしたときに、その薬が口に入ったわけよ。だから、ふたりともあんなに簡単に恋に落ちたんだよ!」
もう、ほとんど独り言だった。
「そっか。きっと、そうだよ!」
拳を握りしめて、立ち上がる。
「単なる“子供騙し”だとばかり思ってたけど……そう考えると楽しいかも」