嘘と秘密と僕らの関係
「ただいま~」
ドアを開けて中に入って。
玄関にある靴を見て。
自然と顔がほころんだ。
来てる。
なるべく平静を装って、リビングのドアを開けると……
「おかえりなさい!郁ちゃん。」
大好きな笑顔が迎えてくれた。
「……久しぶり」
そんな顔を見せられたら、それだけ言うのがやっとだ。
「早かったねっ。長旅、お疲れさまです。」
にこにこしながら駆け寄ってきたかと思えば、おどけたように頭をペコンと下げた。
そして、
「もうご飯の用意はできてるよ?グッドタイミングだね」
俺の鞄を受け取って、上着を脱ぐよう促した。
まるで新婚夫婦みたいだ。
なんか、すごい幸せだ……
こんな時間が待ってるならば、電車で3時間の道のりも全然苦にならない。
遠距離通勤のサラリーマンの気持ちがわかったかも……
なんて、浸っていたのも束の間。
「郁也、おかえり~っ。」
キッチンから顔を出した母さんによって、あっけなく現実に引き戻された。