嘘と秘密と僕らの関係



ひなたの住むマンションまでは、歩いて10分もかからない。

かなり近い。

でも、やっぱり危ないから。


俺は毎回、こうして家まで送り届ける。


ふたりきりになりたい、っていうのが本音だけど。


「やっぱり夜は寒いね。もう冬だもんね。」


しみじみと言いながら、ひなたは両手をこすり合わせた。

小さな手……


つなげたら…つなげるような関係だったら、すぐにでも温めてあげるのに。

すぐ隣にいるのに、触れることは許されない。


“まだ”そういう関係じゃないから。


近いのに遠い。

俺とひなたは、まさにそんな感じだ。



一言でいいんだ。

「好きだ」って言えばいい。

そうすれば、何かが変わるはず。

変えられるはず。

今の関係を打ち破る手段。


でも…なかなか言えないんだよなぁ。


「郁ちゃんありがとう。ここでいいよ。」


気がついたら、マンションの前まできていた。


「また明日ね」


そう言って、にっこり笑って去っていくひなた。

家に上がることすらできない。

はぁっ。

小さくため息がもれた。









俺はいつまで、


この関係を続けるつもりなんだろう―――?





< 20 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop