負けたくない。
くらっと眩暈がしたと思ったら、
膝が、がくんと折れた。

力が入らない――・・・


気付けば先生の右手は後頭部に回っていて、
私の頭は固定されていた。

左手は私の右手の指に、指を絡めていた。


力が入らず、身を先生に任せていた。

やがて、先生は離れた。
けど、私はやっぱり力が入らなかった。

先生の口と、
私の口の間に銀色の糸がひいていた。

糸はプツッと切れ、消えた。


「なん・・・」

言葉を発しようとしたけど、
うまく口が回らなかった。

先生は、ニヤリと笑った。


体がものすごく熱いことに動揺した。
ついでに言うと、顔も熱い。
多分、真っ赤なんだろう。

「あ?初めてだったのか?ディープ」

私はその言葉に反応して、顔を歪めた。

正直言うと、初めてだ。
ていうか、キスでさえ、初めてだった。

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