負けたくない。
「あれ、その傷どうしたの」
朔はそう言い、私の手を指差した。


私は視線を手に向け、ハッとした。


昨日、転んだときの傷。


・・・忘れていた。

結局消毒もしてないし。

てゆぅか瘡蓋になっちゃってるし。



「あ」
私は昨日のことを思い出した。

先生に捕まったとき、
先生が着ていた白衣に手を押し付けた。

もしかしたら血がついてるかも。



そこまで考えて、首を横に振った。


あそこまでされといて、申し訳ないとか思う方がおかしいか。



私はそこで、ため息をついた。

気がつけば、朔はこっちを見て笑っていた。




「独り言、多いね」

「余計なお世話だ、コラ」


私は顔を引きつらせ、若干目をそらした。

それを言われたのは今日で3回目。

朔いわく、私は独り言が多いらしい。



その様子を見て、朔は嬉々としていた。
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