君だけを
第1章
幼い二人
佳奈の存在を知ったのは、幼稚園に通い出した頃。
同じマンションに住んでいるということで、親同士が仲良くなったのがきっかけ。
世間話をしている母親の後ろに隠れながら、俺は彼女の姿をジッと見ていた。
丸い顔に似合う、大きな瞳。
真っ黒で艶やかな髪は耳の上で2つに結われ、彼女の可愛さはハッキリ見えていた。
仲良くなるのに、時間はかからなかったと思う。
小学校の低学年まで、マンションの近くにある公園や互いの家で、毎日のように遊んでいた。
その頃の佳奈は、何でも人並み以上にできて、クラスの男子からも密かに人気があった。
俺は、そんな彼女の身近な存在。
自慢げに、2人の仲を、周りに見せつけていたこともあった。
でも、次第に周りから冷やかされるようになり、友達から仲間外れにされるのが怖くて、俺は佳奈から離れてしまった。
゙佳奈゙から゙嶋田゙と、呼び方まで変えたりして。
寂しがる彼女に背を向けたまま、俺は男友達としか遊ばなくなった。