春の旋律
春休みは退屈だ。
宿題はあるけど、量も少ないし。
暖かいから、すぐにごろ寝してしまう。
…………なんか、面白いことないかな。
………♪〜……♪〜〜……
…………………ん?
私はガバッと起き上がって耳を澄ませた。
なんか………ピアノの音が、聞こえたような。
でも今は全く聞こえない。
気のせい……かな?
…♪〜〜♪〜………♪…〜♪……
あ、やっぱり気のせいじゃない。
テレビを消すと、その音はかすかに、でも途切れることなく聞こえてきた。
その音はアパートの隣の部屋から聞こえてくるようだった。
あ………そういえば。
私は台所に置かれた、新品の洗剤をチラッと見た。
一昨日ぐらいに、あれ持ってきた人、いたなあ。
あの人、隣に越してきた人だったんだ。
私はもう一度耳を澄ませた。
ピアノのことは、あまりよくわからないけど、下手ではない、と思う。
音楽の先生の音より繊細な感じがする。
へえ………ピアノ弾ける人なんだ………。
私は自分の中で、隣人への興味がむくむく膨れあがるのを感じていた。