春の旋律
「……先生。」
私はピアノ椅子から立ち上がって先生の手を取った。
長くて綺麗な指。
私のとは大違い。
思わず手を引っ込めてしまった。
すると先生の手が私の手を追っかけてきて、捕まえた。
「…!」
そして先生は私の手を先生の頬に当てた。
私の心臓は、ドクリと跳ねる。
「ずっと、待ってました。」
「え…」
「畑中さんのこと。ずっと待ってました。来てくれるって信じてました。」
「先生…。」
「男なのに受け身なんてカッコ悪いですよね。すみません。」
「そんなこと…。
私も信じてましたから。先生は私のこと、忘れずに待ってくれてるって。」
「忘れる訳…ないです。」
「先生……大好き…。待っててくれてありがとう…。私、先生の為に頑張ったの……。」
私は先生に抱き締められた。
「もう離しません…。もう待つのはごめんですから」