春の旋律
私は次の日、書店に行った。
私の好きな作家が新刊を出したのだ。
いつもは文庫本を買うけれどその作家の本だけは待ちきれないので単行本。
その本と、あと気になった文庫本を3冊買って、店を出た。
けっこう重い……。
私は本を胸に抱えて家路を歩いた。
アパートの自分の階までエレベーターで上がり、鍵をカバンから出そうとする。
が、本を抱えているので、なかなか出せない。
およよよよ……
その時、ガチャッと、隣の部屋のドアの鍵が開いた。
私は固まった。
ピアノの人……だ。やっと、会える……。
私はそのドアを凝視した。
隣の人っていっても、めったに会えることはないから、きっちり見とかないと。
ドアノブが、回る。
ドアが、開く。
そこから出てきたのは……男の人だった。