春の旋律
「………あ、すみません、挨拶がまだでしたね。この間引っ越してきた、柏木です。よろしくね」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします!」
「……じゃあ、僕、用事があるので……」
「あ、はい、さようなら……」
そう言って、部屋に入ろうとすると。
「あっ、ごめん、ちょっと待って!」
彼に呼び止められた。
「………はい?」
「あ、あの、ピアノ、興味ありますか……?」
「えっ?……………あ、えっと、興味は、あります。知識とかは、全然ないですけど………」
「弾きたいですか?」
「そりゃあ、弾けるようになれたら嬉しいです……」
「……僕に、教えさせて、もらえませんか」
「……………へ!?」