空の向こう側
「どうぞ。」
鵜飼の奥さんはテーブルの上に紅茶を置いた。
リビングのソファーに俺と亜紀は座り
向かい側に眉間の皺をピクピクさせた鵜飼の主人と、貧乏揺すりが止まらない信彦。
「いやぁ、夏君が帰って来てたなんて全然知らなかったよ。」
「帰るつもりは無かったんですが、急に決まったんで…。」
主人に適当な言い訳を述べる。
機嫌が悪いのは明らかだ
「挨拶に来てくれたのは嬉しいが…こんな夜遅くでなくても良いのに。」
「挨拶というか、鵜飼さんに急用がありまして。」
「急用?」顔色が変わる鵜飼親子。
あぁ、苛々する
「率直に言いますけど、亜紀との婚約…あれ無かった事にして下さい。」