傷だらけのヴィーナス
「というわけで、小林君は櫻井のところへ。有紗ちゃんはこっち」
タイミング良く現れた間部主任にそう言われ、私は間部主任について面談室へ入った。
狭い個室に二人きり。
てか、何で名前で呼ぶんだろう?
「これから有紗ちゃんと一緒に仕事できるなんてうれしいよ」
「あ、はぁ…」
「…俺のこと、覚えてない?」
間部主任は急に真剣な顔つきで私にこう言ってきた。
「いえ、その………」
私は口ごもる。
だって、本当にわからないから。
でも、正直に言ってしまったらいけない気がして。