傷だらけのヴィーナス
すると、真剣なまなざしのままだった主任の顔に笑みが戻った。
「…ふふ、ごめんごめん。とりあえず、仕事の話でもしようか?」
なるべく顔に出さないよう心がけたつもりだったのに、間部主任は気を使ってくれたようだった。
「すみません」
私がそう言うと、彼は私に手を伸ばし頭を撫でた。
「これから楽しみだよ」
この言葉がどんな意味を含んでいたかなんて、このとき私は考えてもいなかった。
その後、私たちは仕事の話に戻った。
たまに感じる主任の視線に、私はあまり深く考えようとしなかった。