傷だらけのヴィーナス
「そう。俺は自分で決めたことはなかなか変えないよ?いいじゃない」
間部主任は笑顔でそう返してきた。
「そんな…」
私が困った表情を浮かべると、小林君が近づいてきた。
「間部主任。小松も困ってるじゃないですか」
…なんだろう?
少しだけ刺々しい響きだった。
「小林君。…櫻井が待ってるよ。早く行きなさい?」
そう返事をした主任の声のトーンも低い。
小林君は一瞬躊躇しながらも頭を下げ、小走りに去っていった。
―――なんだか不穏な空気だった。