傷だらけのヴィーナス



「そう。俺は自分で決めたことはなかなか変えないよ?いいじゃない」

間部主任は笑顔でそう返してきた。

「そんな…」

私が困った表情を浮かべると、小林君が近づいてきた。


「間部主任。小松も困ってるじゃないですか」

…なんだろう?
少しだけ刺々しい響きだった。

「小林君。…櫻井が待ってるよ。早く行きなさい?」

そう返事をした主任の声のトーンも低い。

小林君は一瞬躊躇しながらも頭を下げ、小走りに去っていった。

―――なんだか不穏な空気だった。



< 15 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop