傷だらけのヴィーナス
私はその声に驚き、素早く振り返った。
壁にもたれるような格好でこちらを眺めている間部主任がそこにいる。
「わっ!…ご、ごめんなさい」
「いや」
そう言うと、間部主任はどんどん私に近寄ってくる。
私は後ずさり、逃げようとしたがすぐに背中がぶつかり逃げ場がなくなってしまった。
その間に主任は私に被さるように迫ってきていた。
「―――主任?」
二人っきり。
それでもって、至近距離。
私は緊張のあまり震える声でそう呼んだ。
しかし、返事がない。
「―――主任!」