傷だらけのヴィーナス



トイレから戻ると、間部主任は忙しくパソコンのキーボードを叩いていた。

その姿は、見とれてしまうほどかっこいい。

だからといって、それ以上はなにも感じない。

あんな完璧な男の人からしたら、私なんて遊びの、一過性のものにつきないのだから。


「戻りました」

そう言うと、主任はこちらを向いて手招きした。

「なんでしょうか」

パソコンの画面を覗くと、イタリアンのお店のHPが広がっていた。

「今夜、ここでいい?」

耳元でそう囁くもんだから、私は耳を押さえて一歩逃げた。

「―――なんでもいいです!」

私は再び顔を真っ赤にして自分の席に戻った。

それを見て、主任はクックッと笑っていた。



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