傷だらけのヴィーナス



ああぁ、もう!

頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。

定時になんてならなきゃいいのに!



…とは思っていても、無情にも時計の針は定時を示してしまった。

私は机に突っ伏し、まだ残っている仕事に手をつける気分もどこかへ行ってしまった。


「さて、有紗ちゃん」

気づくと私の隣の席からいすを引っ張ってきて座っている。

「…まだ残ってます」

「だろうね。…あと一時間で終わらなかったら、わかってるよね?」

笑いながらそう言ってくる間部主任。
でも、目があんまり笑っていない。

「…デートなら他の人と行ったらいいじゃないですか」

私はのろのろと起き上がりそう言いはなった。



< 25 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop