傷だらけのヴィーナス
ああぁ、もう!
頭の中がぐちゃぐちゃになってきた。
定時になんてならなきゃいいのに!
…とは思っていても、無情にも時計の針は定時を示してしまった。
私は机に突っ伏し、まだ残っている仕事に手をつける気分もどこかへ行ってしまった。
「さて、有紗ちゃん」
気づくと私の隣の席からいすを引っ張ってきて座っている。
「…まだ残ってます」
「だろうね。…あと一時間で終わらなかったら、わかってるよね?」
笑いながらそう言ってくる間部主任。
でも、目があんまり笑っていない。
「…デートなら他の人と行ったらいいじゃないですか」
私はのろのろと起き上がりそう言いはなった。