傷だらけのヴィーナス
すると、間部主任は私の手に自分の手を重ねてきた。
指を絡め、グッと力を込めていく。
「誰でもいい訳じゃない」
じっと私を見据え、そう言う。
私は手をどかそうとしたが、びくともしない。
「有紗ちゃんだから言ってるの」
さらにそう言い、間部主任はゆっくり手を離していった。
主任の指は、名残惜しそうに私の手の甲を這ってゆく。
「とりあえず待ってるから」
そう言って、主任は自分の席に戻っていった。
―――なんだよ。
私はそう心の中で呟き、仕事に取りかかった。