傷だらけのヴィーナス
意外と真剣な表情だったな。
…本気なのかな?
―――いやいやいや。
こんなこと考えるのは、家に帰ってからにしよう。
そう考え、私は集中するために深く息を吐いた。
時刻は19時を回ったばかり。
私はやっと仕事を終えることができた。
「主任。出来上がりました」
私はおずおずと書類を間部主任に提出した。
彼は軽く目を通すと、書類をファイルにしまう。
「うん、いいよ。…じゃあ、行こうか」
そうだった。
私は曖昧に頷き、机を片づけに向かった。