傷だらけのヴィーナス
*リハビリ
助手席に戻る私のために再びドアを開けようとする間部主任を、私は制した。
「一人で開けられますから」
私がそう言うと、自分から繋がれていた手を離そうとした。
しかし、力が強くて離れない。
「主任………」
私がそう呼ぶのと同時に、私の身体は主任の方に引き寄せられた。
―――初めて男の人に抱きしめられている。
耳元近くで規則的に刻まれる心音。
かすかに感じる人のあたたかさ。
私はしばらくの間、自分がどうされているのかわからなくてそのままだった。
「俺にリハビリさせてよ」
しばらくそうしていると、間部主任はそう言った。