傷だらけのヴィーナス
そして午後。
始業してからまもなく、部長によって集合させられた私たちは間部主任の登場を待った。
「―――おっ、来たな!こっちだ」
部長が手招きをすると、フロアには背の高い男性が入ってきた。
緩いパーマがかった黒髪をだらしなくないようにまとめ、長い手足を上質なスーツで包んでいる。
目鼻立ちも文句のつけようがないくらい整っていて、特に鋭い切れ長の瞳が印象的だった。
こんなに整った人、見たことない。
そう思うのと同時に、彼には近づきたくない。
そうも思ってしまった。
「間部左京と申します。これからよろしくお願いいたします」
よく響く低い声で挨拶をし、私たち一人一人を確認するように見渡した。