傷だらけのヴィーナス
だってそうだ。
スーツ姿も十分サマになっていたけど、私服はさらに決まっている。
カットソーにジャケット、ジーンズのラフなスタイルながらすべてがオートクチュールみたい。
隣を歩いていて、なんだか申し訳ない気分になった。
「今日の有紗ちゃんかわいいね」
不意にこちらを向き、間部主任はそう言ってきた。
私は俯き、熱く火照った顔に手を当てる。
「…そんなことないです」
「謙虚だなぁ。ま、それがいいところなんだけど」
主任はそう言って笑った。
私も、そんな主任を見て気づかれないようにほんの少しだけ笑った。