傷だらけのヴィーナス
「有紗ちゃん、これ……」
午後が始まり、私は間部主任から指示をもらっているところだった。
「―――でお願い、今日中ね。あとさ、」
仕事の指示は一通り終わったのだが、まだ話が続くようで私は耳を傾けた。
「昼、小林と食べたんだって?浮気者」
……小林君、当たったよ。
「いや、そんなつもりは」
「あーあ。いじめたくなっちゃったな。とりあえず夜は俺とご飯食べようね」
一見笑顔だが、目は全く笑っていない。
「それとも、今ここでいじめてほしい?」
その一言に、私は後ずさりして自分の席に逃げた。
「…小林かぁ」
そう呟いた声は、私までは届かなかった。