傷だらけのヴィーナス
私は定時までに仕事を終わらせるべく、必死でキーボードを叩いた。
おかげでなんとか定時ギリギリに終わらせ、間部主任からオッケーをもらうことができた。
「よっぽどいじめられたいんだね」
二人で会社を出て、駐車場まで歩いていると間部主任はそう言ってきた。
「そ、そんな訳じゃ」
「まぁまぁ」
よくわからないまま制され、私たちが車に乗り込むときだった。
「―――左京!」
間部主任を名前で呼ぶ声。
私たちが振り返ると、そこには女の人が立っていた。
「……美和」
間部主任がそう呟くのと同時に、その女の人はこちらに向かってきた。
そして、私を押し退けて間部主任に抱きついたのだった。