傷だらけのヴィーナス
「左京!わたし、やっぱり左京が……」
―――あぁ。
この人と間部主任は、つきあっていたんだな。
私は、遠巻きに二人を見つめていた。
「……私、帰りますね!」
私は主任にそう告げると、その場を去ろうとした。
「ちょ………有紗!」
なんだろう。
なんだろう、このズキズキした気持ちは。
よくわからないけれど、このまま二人を見ていられる気がしなかった。
そのまま、主任の呼び止める声にも聞こえない振りをして、私は一人帰り道を急いだ。