傷だらけのヴィーナス
*goodbye



午後の業務は、全く頭が働かなかった。
そんな中大きなミスもなく半日を終えられたのは、午後の業務が資料室の整頓だったから。

―――櫻井さんからの指示だった。



「小松ちゃん、午後は資料室の片づけお願いね」

私は驚いた。
間部主任でなく、櫻井さんから指示を出されるのは初めてだったから。

けれども、すぐに理由がわかった気がした。

「……わかりました」

私は俯きながら、資料室に向かう。

泣き腫らした目はまだ若干赤く腫れていて、明らかに泣いたのがわかってしまう。

資料室に向かうには、間部主任の席の前を通らなくてはならない。

私は足早に、資料室に向かった。



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